ご用心

 

イスタンブール旧市街散策の帰途、とある土産品店に立ち寄った。

もう、最終日なので、トルコリラの持ち合わせはほとんどなかったが、トルコではUSドルもユーロも通用するので、その点便利だ。

ある小物類を品定めしていると、その店のオーナーと思しきオッサンが近寄ってきて、これらは一つ1ドルだと言う。そうか、それでは11個で10ドルにしてくれるか、と言ったところ、OK, no problem.

と即座に商談(?)成立。10ドル紙幣がなかったので、20ドル渡したところ、一旦奥に入り、品物をビニール袋に入れ、お釣として5ドル持ってきた。なんだ、これは5ドル紙幣じゃないか、10ドルの買物に20ドル渡したんだから、お釣りは10ドルのはずじゃないか、と言ったものの、相手は、何やら口でぶつくさ意味不明のことを言っているだけで、なかなかあと5ドルを渡そうとしない。

 それではこの品物は要らない、全部返すから、先ほどの20ドルを返してくれ、と言ったところ、やっとあとの5ドルを返してくれた。

 やれやれ、うっかり騙されそうになった。油断も隙もあったもんじゃない、と思いつつ、ホテルに戻り、袋を開けて品物を確かめたところ、何と11個あるはずのものが9個しか入っていなかった。

 あちらとしては、まずお釣りの紙幣に気が付かなければ大成功、気が付いても、そちらに注意を向けさせ、品物の数を確かめるのを忘れさせれば、まずまずの成功、と、2段構えの騙しのテクニックであったようだ。実に巧妙な手口に、腹立たしさを通り越し、むしろ感心した次第。

 これからイスタンブールへ行かれる方、どうぞご用心のほどを。

 

 もっとも、トルコも地方に行けば話しは別で、ある小都市のドライブインで、箱入りのチョコレートを見つけ、買おうとしたところ、売り子さんはその箱を見て、これはもうすぐ賞味期限が切れるからやめたほうがいい、と言ってくれた。やはり、どの国でも地方の人は純朴である。