失敗談1

(トイレで100円強奪さるの巻

 

最初から尾篭な話で恐縮であるが、これが旅行最初の事件(?)であるので、お許し願いたい。

 

ローマへの往路の途中、バンコクに午前1時30分ごろ着いた時のこと。空港待合室は人が少なく、閑散としていた。夜中とあって他の飛行機の便もなく、また我々の搭乗機からも降りた人は少なかった。

ここでうっかりとトイレのドアを押してしまう。“うっかり”と言ったのは、日本出発前に、外国の公衆トイレに入る時は小銭の用意が必要と教えられていたからだ。あいにく日本を離れたばかりで、外国紙幣は大きいのばかりで、小銭は持ち合わせていなかった。

果たして中に入ると、男の番人が二人いた。しまったと思ったが、今さら引き返すわけにもいかない。用を済ませて手を洗い終わると、案の定お世辞にも綺麗とはいえないタオルが目の前にサッと差し出された。”I don’t need it.”と言って、自分のハンカチを使い、出て行こうとすると、「金を払え」と手振りで示す。タオルは使わなかったんだから、と言いかけたが、そんなことは言い訳になりそうもない。第一言葉が通じない。しかも他の客はすべて出て行ってしまった後で、自分一人しか残っていない。下手に抵抗したら危ない。”I don’t have any American money. I only have Japanese coins. Is that O.Kと言ってみたら、首を縦に振る。

それではと財布を出して10円玉を二つ渡そうとすると、No,no!” と言って受け取ろうとせず、私の財布の中を覗き込む。 銅貨はやはり安っぽく見えるらしい。

仕方なしに100円玉を1枚つまんで相手の掌に載せる。”Is that all right ?” と言うと、Yes,thank you.”  何のことはない、本来なら10セントで済んだところを3倍近くもふんだくられてしまったわけだ。