イマーム

 

イマーム(Imam)とは、アラビア語で「指導者」「規範」を意味し、イスラム教の一般的用法でイスラム教徒の共同体の政治的指導者または礼拝の指導者をさす。預言者ムハンマドとウマイヤ朝ごろまでの初期の後継者たちはその両方の役割をはたし、首都で国家の最高権力者が大モスクでみずから金曜礼拝をとりおこなうように、各地方都市ではその地をおさめる総督が同様のことをおこなった。しかし、のちに行政的、政治的役割と宗教的役割はわかれた。

 ところが、イランで圧倒的多数を占めるシーア派では、今でもイマームという言葉は政治と宗教の両方の指導者を意味し、ムハンマドの娘ファーティマとその夫アリーの血をひかなければならないとされる。しかし、アリー以外に実際に政治的統治をしたイマームはいなかった。

 シーア派の主流である十二イマーム派はイマームを誤りも罪もおかさない存在であるとみなし、イスマーイール派は神の化身とみなしている。十二イマーム派では最後のイマームは姿を「隠し」ており、その再臨がまたれている。

これに対し、イスラム世界全体では主流を占めるスンニ派は、ムハンマドの後継者は血筋に関係なく、イスラム教徒の総意によって決めるべきであるという立場をとっている。