エピローグ

 

インドの広さを実感した旅でした。出発前は各都市間の移動にこんなにも時間がかかるとは思いませんでした。

なにしろ、デリー〜ベナレス間が飛行機で3時間、カジュラホ〜アグラ間は鉄道で4時間はまだしも、ベナレス〜カジュラホ間と、ジャイプール〜デリー間はバスで、それぞれ途中昼食休憩やトイレ休憩を含め、実に12時間、9時間といった具合でした。

とくに最後の移動だったジャイプール〜デリー間は、途中、幹線道路で事故があったらしく、大きく迂回せざるを得なくなったため、時間を甚だしくロスする結果となりました。

このときの迂回道路はひどいものでした。道路にはそこかかしこに大小様々な穴が開いているにもかかわらず、ドライバーは遅れを取り戻そうと結構なスピードで走るので、タイヤが穴の上を通るたびに、上下に揺れ、始末に終えませんでした。

とうとう、大きな穴にぶつかり、車体後部が大きく上下したため、最後部に座っていた妻は天井に頭がつくくらいに大きく跳ね上げられて、背骨を折ってしまったほどでした。

インドは行ってみて、ハマル人と、嫌いになる人との両極端といわれます。

インドの水は衛生面で問題があると聞いていたので、私自身は水はもちろん、生野菜など一切口につけないようにしていましたが、妻はインド滞在中からひどい下痢にかかり、帰国後も一向に止まらないので、とうとう入院を余儀なくされたところ、2種類の日本ではあまり見られない細菌が検出されたと、医師から告げられました。

私は軽微な下痢で済みましたが、その当時はもうインドは懲り懲りと思いました。

しかし、それから6年も経ち、いろいろとインドに関する情報に触れると、やはり、懐かしさがつのり、とくに私が行ったのはインド北部のほんの一部だけ、これだけでインド全体を評価するのは早計で、インド南部はまた気候も風情も北部とは異なるようなので、興味を持ち始めているのも事実です。

いずれにせよ、長年の念願が叶って、アグラではタージ・マハールの崇高な姿に触れ、またベナレスでは早朝のガンジス川で人々の沐浴姿に崇高な信仰心を見たという経験は、今後も貴重な精神的財産として、死ぬまで私の心に残ることでしょう。

百聞は一見に如かず。ハマリ派、懲り懲り派の区分は別にして、一度はインドを訪ねてみることをお勧めします。